バイクすり抜け問題:よくある誤解

 

すり抜け容認派の方たちは同じような主張で自己を正当化しようとします。多くは道交法の一部だけを都合良く解釈していたり、ひどい場合は全く理解していないことに基づきます。自己の発言の結果、事故にあう人や違反として取り締まられる人が出る可能性を考えた上で責任をもって発言されている方はどれほどおられるでしょうか。

よくある間違いを列挙します。

1、「同一車線での前車を抜くのは進路変更を伴わないから追い抜きだ」

 →同一車線内追い抜きというのは追い越しの不適切な一形態です。追い越しの前の車両位置に問題があるために進路変更をせずに済んだだけです。詳しくは追い抜きの項を参照してください。

 また車両通行帯を走行中の場合は右側の車両通行帯に車線を変更して、追い越さなければなりません。同一車線内の追い越しは認められていません。これは道路交通法第20条第3項によります。このことから車列間のすり抜けはこの道路交通法第20条第3項の違反となることがわかります。


2、「右折待ちの車の左側を車も追い越している。すり抜けはそれと同じことだ」

 →道交法28条では原則右側追い越しとしてますが、同時にその例外を挙げています。右折待ちの車両に関しては左から追い抜くようにという内容です。一方、バイクのすり抜けは右折の車でもない直進車であっても、また接触事故の可能性の高い左折車であってもすり抜けていきますので、道交法で規定された例外には当たらず違法行為となります。ちなみに右折待ちの車を右から追い抜き事故が起きた場合は判例 のように無理な追い抜きをした方の全面的過失となります。


3、「道交法32条の割り込みの禁止は前方に割り込むなと書いているので横なら違反ではない」

 →走行すべき車線が一つしかない場合、一方に違反があったとしてもより前方に位置していれば、走行の順番として前になります。本来の順番が変わってしまうということは世間の常識でも「割り込んだ」と言うことです。他の条項でも前方とは斜め前であっても前方と考えられています。前方を真ん前というようには定義されていません。また最終的にはどこかの段階で物理的にもすり抜けた車両の前に出ることになります。さらに言えば先行車両の前方にでることを目的に側方を通過するのですから側方通過を始めた時点で「割り込み」違反に該当します。危険があれば行為の途中でも取り締まり対象となるそうです。
 
 
4、「道交法には自転車は併走時の違反があるけどバイクや車にはそのような条文はないので同一車線での併走は禁止されていない」

 →道交法19条に軽車両の併走禁止が規定されています。軽車両だけです。本当にバイクや車は関係ないのでしょうか。いいえ違います。この条文は併走状態になった後でも漠然と走り続けている軽車両(自転車)の双方を処罰できるように設けられている条項です。並走状態になった場合、本来は追いつかれた方は違反に問われないのですが、自転車などの軽車両はお互いに話しながら走っていたりするので追いつかれた方も同じ責任を負わせようという考えです。軽車両を含め車両全般はキープレフトと車両通行帯走行の点から、1車線に1台しか走れません。後から追いつき併走状態となっている場合は後からきた車両がこれに違反します。バイクのように左側から追いつき並走している場合は原則右から追い越すことと定めた道路交通法第28条(追い越しの仕方)の違反です。
 
 
5、「追い越しとは走行している車を抜くことだから、信号待ちなどで止まっている車を抜くことは追い越しではない」

 →これは自動車教習のときの教習本に「追い越しとは、走行中の前車に追いつき、進路を変えて側方を通過し、前方に出ることをいいます。」と書かれているからでしょう。ここでの走行中の車とは駐車車両などと区別する意味で使っているのでしょう。それをすり抜けしたい人は信号待ちの車に当てはめようというのです。実際には道路交通法第2条で「追越し」とは「車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう」と定義されています。どこにも走行中とは書かれていません。また信号待ちや渋滞で止まっている車はいつ動くかわからない「走行中の車」であります。走行中にたまたまスピードが0になってしまっただけである目的の場所に向かって走行しているいるのです。道ばたでエンジンもかけずに駐車・停車している車とは全くの別物です。また百歩譲って追い越しにならないとしても、この場合は「割り込み」違反となるため違反運転であることには変わりありません。