バイクすり抜け問題:分析してみる:近畿地方整備局のレポート

 

二輪車事故防止対策の実施とその改善効果について」というレポートをwebで見つけました。結構、おもしろいレポートです。

 

 「交通混雑の状況に応じて車両の合間を縫った走行が可能である二輪車の走行特性と道路幅員構成に着目した幅員構成の適正化対策(すり抜け走行空間の縮小)の効果分析を,事故データの分析に加え,問題となる二輪車の詳細な交通挙動についてビデオ画像を用いて分析し,これまで解明されていなかった当該区間の二輪車の走行特性と事故原因を解明するとともに,対策前後の比較結果と道路利用者の意識の変化から,二輪車事故防止対策の有効性を示した」という前置きで始まります。

 

 実際には二輪車の走行位置と速度を計測した上で、歩道と車道外側線の間の路肩を縮小し、再び二輪車の走行位置と速度を計測しています。「歩道と車道外側線の間が路肩?」と感じた方はこのHPでも従来から説明していますので、そちらをご参照ください。歩道と車道外側線の間は路肩なのです。路肩を縮小させた結果、事故の数がどうなったかを調べています。その結果は明らかでした。すり抜けしにくくなったことで左折時事故が20.8件から10件(約52%減少),右折時事故が21.3件から6件(約72%減少)と減少したのです。またこれら以外の事故も減ったようであり「ここで着目すべき点は,追突事故などの二輪車を第二当事者としない事故が減少していることであり,二輪車の走行挙動の変化により左折巻き込み・サンキュー事故が減少,それに伴って前方車両の急な減速やブレーキ頻度の減少等が関連している可能性がある.」と記載されています。すり抜けが他の事故を誘発していた可能性がここに指摘されています。

 残念なのは渋滞時のすり抜けの数自体は減っていないことです。すり抜けの速度が低下したこと、バイクがより慎重になったことで事故が減っているのです。このホームページでも従来から言っていますが、すり抜けをしなければそれに関連する事故は起きないのですから、すり抜け自体がなくなるような啓蒙活動が必要です。このホームページもその役に立つと良いのですが。このレポートの結果はすり抜けをなくそうという運動の正しさが客観的に証明されていると言って良いでしょう。

 

 ひとつこのレポートに記載されている現時点での一般認識上の問題点をあげるとすると二輪車が第2当事者(より過失が少ない)が多すぎるのではないかということです。このホームページでも過失割合のおかしさを問題として取り上げていますのでこの件についてはそちらをご参照ください。実際の過失割合をより正当な過失割合に近づけることにより、心理的にすり抜けを抑制することができるはずです。そうすればさらに事故が減るでしょう。